構造の人 LabLab

Judgment in Structure · Field Note 23

AIに任せる範囲を狭くすると、なぜ人の確認が減るのか

明細にAIが科目をつけたとします。書く手間はたしかに消えます。それでも、どれが間違っているかは一覧からは分からないので、担当者は結局ぜんぶ開くことになります。

構造の人 Lab / 読了の目安 3分 / 触れる実演つき

Starting point

全部AIに渡しても、開く件数は減らない

仕訳でも、分類でも、下書きでも同じです。AIに丸ごと渡すと空欄は埋まり、画面のうえでは片づいて見えます。

けれど誤りが何件かあるとして、それがどの行なのかは一覧からは分かりません。分からなければ、安全側に倒して全部開くことになります。消えたのは書く時間で、開く回数のほうはそのままです。

The structure

一度決めた条件に当たったものは、都度は判断し直さない

机に向かう人の左に天井近くまで届く書類の山があり、細い門をくぐった先の手元には数枚だけが残っている様子
開かずに済んだ分だけが、減った件数です。

先に条件を決めておく、というやり方があります。この交通サービスなら旅費交通費、飲食は一万円を境に会議費と交際費に分ける。条件そのものには、最初に一度だけ人が目を通して承認しておきます。

承認済みの条件に当たったものは、明細ごとに判断をやり直す理由がありません。当たったかどうかは機械が判定できるので、結果の一覧を眺めるだけで足ります。

その場の推論で決めたものは、そこが違います。条件が事前に固定されていないので、一件ずつ「今回はこれでいいか」を見ることになります。

AIに渡す件数を減らすと、人が開く件数はそれ以上に減ります。

Live model

条件を足しながら、開く件数を数えてみる

架空の明細を10件並べています。押す前は、全件をAIに渡している状態です。条件を入れるボタンを押すと、当たった明細が確定に移り、上の二つの数字が動きます。

条件に当たらなかった明細には、AIが科目の案と、そう考えた理由を添えて出します。人はそれを見て、そのまま採用するか直すかを決めます。案が読めても開いていることに変わりはないので、開かずに済むのは条件で確定した分だけになります。

10件の明細を仕分ける

10件の明細(架空)。条件に当たらない分は、AIが案と理由を出します
条件をどこまで入れるか人が開いて決める件数開かずに済む件数
何も入れない(全件AIに渡す)10件0件
三つとも入れる4件6件
人が開いて
決める件数
10件
開かずに
済む件数
0件

いまは全件をAIに渡しています。起票は全部済みますが、開く件数は一件も減っていません。

AIはどの状態でも、条件に当たらなかった全部に案を出しています。それでも人が開く件数は、条件を入れた分だけ落ちていきます。

Closing

数えるのは、開かずに済んだ件数

何割をAIで処理したかは、外から説明しやすい数字です。ただ、その割合が高いほど手元が楽になるとは限りません。全件にAIが案を出した状態は、割合のうえでは満点で、開く件数は一件も減っていません。

AIが理由を添えてくれれば、一件あたりは軽くなります。それでも、採用してよいかを決めるのは人なので、開くこと自体はなくなりません。件数を動かせるのは、先に決めておいた条件のほうです。

範囲を広げることが自動化なのではなく、開かなくていいものを増やすことが自動化なのだと思います。範囲は、狭いほうが効くことがあります。